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東京地方裁判所 昭和44年(ワ)9269号 判決

原告

宮下すゞ

外五名

代理人

大山英雄

被告

西塚武

被告

高王建設株式会社

被告代理人

平沼高明

外二名

主文

被告らは各自原告宮下すゞに対し金五三一万六九八〇円、原告宮下宏子、同宮下政信に対し各金四四〇万六九八〇円、原告宮下恒吉、同宮下ふ志えに対し各金二七万円およびこれらに対する昭和四四年九月七日以降各支払済みに至るまで年五分の割合による金員の支払をせよ。

原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は、これを五分し、その一を原告らの負担とし、その余を被告らの負担とする。

この判決は、第一項に限りかりに執行することができる。

事実

第一  当事者の求める裁判

(原告ら)

被告らは各自原告宮下すゞに対し六七〇万四九五三円、原告宮下宏子。同宮下政信に対し各五七一万四一三九円、原告宮下恒吉、同宮下ふ志えに対し各五二万円およびこれらに対する昭和四四年九月七日以降各支払済みに至るまで年五分の割合による金員の支払をせよ。

訴訟費用は被告らの負担とする。

との判決ならびに仮執行の宣言。

(被告ら)

原告らの請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

との判決。

第二  請求の原因

一  事故の発生

昭和四三年一一月三〇日午前六時一〇分ごろ、東京都北区豊島三丁目二二番八号先路上において、被告西塚運転の小型貨物自動車(足立四や二八〇九号、以下被告車という)とその反対方向から進行してきた訴外宮下貢運転の第二種原動機付自動車(足立区な六二五〇号、以下原告車という)とが衝突し、その結果同日訴外貢が死亡した。

二  責任原因

被告らは、それぞれ次の理由により、本件事故によつて生じた訴外貢および原告らの損害を賠償する責任がある。

(一)  被告西塚は、被告車を所有し自己のために運行の用に供していたのであるから、自賠法三条の責任。

(二)  かりにそうでないとしても、同被告は、事故の発生につき、前方不注視、センターラインオーバー等の過失があつたから、不法行為者として民法七〇九条の責任。

(三)  被告西塚は被告会社に運転手として雇われていた者で、本件事故は被告西塚が被告会社の業務に従事中発生させたものであり、被告会社は、自己のために被告車を運行の用に供していたのであるから、自賠法三条の責任。

三  損害

(一)  訴外貢の逸失利益 一六五四万二四一八円

1 訴外貢は、昭和六年一〇月二六日生れであるので、事故当時三七才一か月余であつた。右年令の平均余命年数は35.04年であり、就労可能年数は二六年であるから、同訴外人は本件事故がなかつたならば、少くとも満七二才に達するまで生存し、満六三年に達するまで就労可能であつた筈である。

2 ところで、同訴外人は昭和三二年一月一二日東京都交通局に俸職し、本件事故がなかつたならば、従来の慣例に従い勧奨退職年令である満六〇才まで勘務し、今後二二年一一か月間就労し、この間収益を取得することができた筈である。同訴外人は事故当時、東京都企業職俸給表四等級一三号俸であつたが、本件事故がなかつたならば、東京都企業職の慣例に従つて昇給昇格し、(イ)基本給総額、(ロ)毎年右基本給総額の34.537パーセント(ただし請求は三四パーセント)の超過勤務手当、勤勉手当その他の諸手当、および(ハ)右基本給総額の39.5724パーセント(ただし請求は三九パーセント)の期末手当、夏期手当、年末手当の給付を受けた筈である。さらに、配偶者原告すゞは昭和二年二月二七日生れ、長女原告宮下宏子は昭和二八年六月七日生れ、長男原告宮下政信は昭和三四年八月二八日生れであるから、同訴外人が満六〇才のときには、いずれも生存している筈であり、原告すゞは同訴外人が退職するまで毎月一、〇〇〇円、子は満一八才に達するまで毎月第一子六〇〇円、第二子四〇〇円ずつの扶養手当を受けていた筈である。その詳細は別表第一のとおりである(円未満切捨)

次に、同訴外人は満六〇才まで勤務し、退職したときは、東京都職員共済組合から残存余命年数期間は毎年六三万五八八〇円の退職年金を受給できた筈である。

3 右の計算により算出した被害者の総収入は、合計四二九二万四九六七円となるが、同訴外人の消費単位を一、配偶者原告すゞの消費単位を0.9(ただし、退職年金については一)、子原告宏子、同政信は、成年に達するまで同訴外人が扶養した筈であるから、子の消費単位を一〇才までを0.7、一一才から一四才までを0.8、一五才から二〇才までを0.9として、生活費を控除すると、同訴外人は、二三一五万二五九八円の得べかりし利益を喪失したこととなるが、これをホフマン式計算方法により現在一時に請求する金額に換算すると、一四二一万二八〇五円となる。その詳細は別表第二のとおりである(円未満切捨)。

4 次に、同訴外人は、本件事故がなく、満六〇才で勧奨退職したとすれば、在職年数は三四年一〇か月となり、退職時七一六万二八〇〇円(八万九五三五円の八〇か月分)の退職金の支給を受けた筈である。これをホフマン式計算方法により現在一時に請求する金額に換算すると、三三三万一四八九円となるが、すでに一〇二万九〇六〇円を死亡時に受け取つているので、その額は二三〇万二四二九円となる。

5 また、同訴外人が本件事故がなく満六〇才で勧奨退職したとすれば、東京都職員互助組合から一四万四〇〇〇円のせん別金をもらつた筈である。これをホフマン式計算方法により現在一時に請求する金額に換算すると、五万四三四四円となるが、すでに二万七一六〇円のせん別金を受けているので、その差額二万七一八四円が得べかりし利益の喪失となる。

6 ところで、原告すゞ、同宏子、同政信は同訴外人の相続人であるから、その死亡により右損害賠償債権一六五四万二四一八円の各三分の一すなわち、五五一万四一三九円ずつを相続により取得した。

(二)  葬儀費用 二八万〇八一四円

原告すゞは、訴外貢の葬儀を行ない、その費用として二八万〇八一四円の支出を余儀なくされた。

(三)  治療関係費 一万六一一五円

原告すゞは、訴外貢の入院治療に伴ない、次のような費用の支出を余儀なくされた。

1 医療費 六一一五円

2 雑費 一万円

(四)  慰藉料 合計四五〇万円

訴外貢が死亡したことによる原告らの精神的苦痛を慰藉すべき額は、原告すゞにつき一五〇万円、原告宏子、同政信につき各一〇〇万円、同訴外人の父母である原告恒吉、同ふ志えにつき各五〇万円が相当である。

(五)  損害の填補 合計三〇〇万六一一五円

自賠責保険により、原告すゞは一〇〇万六一一五円、原告宏子、同政信は各一〇〇万円の保険給付を受けたので、以上の各損害合計額からこれらを控除する。

(六)  弁護士費用 合計八四万円

原告らは、被告らが再三にわたる原告らの損害賠償請求に対し誠意ある回答を示さないので、弁護士たる本件原告ら訴訟代理人に本訴の提起、追行を委任し、そのため原告すゞは四〇万円、原告宏子、同政信は各二〇万円、原告恒吉、同ふ志えは各二万円の弁護士費用を支出することとなつた。

四、結論

以上の理由により、被告ら各自に対し原告すゞは六七〇万四九五三円、原告宏子、同政信は各五七一万四一三九円、原告恒吉、同ふ志えは各五二万円およびこれに対する訴状送達の日の翌日である昭和四四年九月七日以降各支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

第三  被告らの事実主張

一、請求原因に対する認否

第一項は認める。

第二項の(一)のうち被告西塚が被告車を所有していたことは認める。(二)は認める。(三)については、一且認めると答弁したが、右は真実に反しかつ錯誤に基づくものであるから、右自白を撤回し、否認の答弁に改める。

第三項のうち、訴外貢の職業および(五)は認めるが、その余はすべて不知。

二、過失相殺の抗弁

被告西塚は、交差点の左側から急に飛び出してきた訴外自動車を避けようとして、ハンドルを右に切つたところ、対向車の直後からセンターラインぞいに進行してきた原告車に自車を接触させたものであつて、訴外貢にも先行車との間に車間距離を充分といつていなかつた過失および左端を通行しなかつた過失が存するので、過失相殺を主張する。

第四  抗弁に対する認否

訴外貢の過失の点は否認する。

なお、被告会社の運行供用者に関する自白の撤回は異議がある。

第五  証拠関係〈略〉

理由

一事故の発生

請求原因第一項記載の事実は当事者間に争いがない。

二責任原因

(一)  被告西塚の運行供用者責任

被告西塚が被告車を所有していたことは同被告と原告らとの間で争いがなく、これによると、同被告は、被告車を自己のために運行の用に供していたものと推認することができ、これを左右するに足りる事情は証拠上認められない。

(二)  被告会社の運行供用者責任

被告会社が自己のために被告車を運行の用に供していたことは原告らと同被告との間で争いがない。

被告ら訴訟代理人は、右自白は真実に反しかつ錯誤に基づくものであるとして、その撤回を主張するが、昭和四五年八月一四日付の準備書面によると、被告ら訴訟代理人が右のような自白をしたのは、「そうしておかないと、任意保険が使えないと考えたからである」というのであつて、その主張自体から、かりに右自白が事実に反するとしても、そのことを知りながら自白したもので錯誤によるものでないことが明白であるから、右自白の撤回は許されないものといわなければならない。

そうすると、被告らは、いずれも自賠法三条により、本件事故によつて生じた訴外貢および原告らの損害を賠償する責任がある。

三訴外貢の過失

被告らは事故発生につき訴外貢にも過失があつたとして、過失相殺を主張するが、〈証拠〉によれば、訴外貢は、原告車を運転し、車道部分の職員六メートルの道路の中央寄りを走行していたところ、対向してきた被告車が、その左側から被告車の進路上に進出してきた訴外車を避けるべく、右にハンドルを切り、中央部分を越えて原告車の進路上に進出したため、これと衝突したものであることが認められ、全証拠によるも、同訴外人には損害額を算定するにあたり斟酌すべきような過失は認められないから、被告らの右主張は失当である。

四損害

(一)  訴外貢の逸失利益

1  〈証拠〉によれば、訴外貢は、昭和六年一〇月二六日生れの男子で、昭和三二年一月一二日東京都交通局に就職し、事故当時、同滝野川営業所に運転手として勤務していたこと、同訴外人の基本給は、東京都交通局企業職員給料表の四等級一三号俸月額五万〇〇六八円であつたこと、扶養手当は、配偶者が月一〇〇〇円、第一子が月六〇〇円、第二子が月四〇〇円で、子の場合は、同人が満一八才に達する日の属する月まで支給されること、右給料表の適用を受ける職員の超過勤務手当、期末手当、年末手当等の諸手当は、勤務状況が普通の場合、年間基本給総額の少なくとも七三パーセント相当額に達すること、東京都交通局では、停年制は採用されておらず、訴外貢のような普通職員の場合、満六〇才に達する日の前日に退職するのが慣例であるが、同訴外人が順調に勤務を継続し、右時点で円満退職した場合、同訴外人は、死亡後に改正された昭和四四年四月一日適用の右給料表によると、別表第三の期間・等級号・基本給欄記載のような経過で昇給昇格し、昭和六六年一〇月二五日退職するにあたり、三等級特五号から二号級名誉昇給し、当該基本給月額八万九五三五円に八〇を乗じた退職手当の支給を受け得たものと予想されること、そして、この場合、訴外貢は、退職後死亡するまで、退職前三年間の基本給平均月額に一二を乗じた基礎給料年額一〇四万二四二八円六〇銭に年金支給率六一パーセント(勤続年数二〇年の場合における基本率四〇パーセント、その後在職年数が一年増すごとに加算率一五パーセントを加える。したがつて、同訴外人の場合、勤続年数は三四年一〇月であるが、端月数一〇月は切捨てになるため、六一パーセントとなる。)を乗じた退職年金六三万五八八二円(円未満切上げ)の支給を受ける資格を取得することが認められる。

そして、〈証拠〉によると、訴外貢の扶養家族は、昭和二年二月二七日生れの配偶者原告すゞ、昭和二八年六月七日生れの長女原告宏子および昭和三四年八月二八日生れの長男原告政信の三名であつたことが認められ、これによると、同訴外人が右のような収入を得るために要したであろう生活費は、所得税等の公課をも含めて、原告宏子が満二〇才に達し自活能力を取得するものと考えられる昭和四八年度までは収入の三〇パーセント、その後原告政信につき前同様の昭和五四年度までは収入の四〇パーセント、その後は給与、退職手当および退職年金のそれぞれ五五パーセントと認めるのが相当である。なお、原告らは、退職手当について、給与および退職年金と異なり生活費の控除を不要とする立場をとつているが、訴外貢の生存を前提とする限り、原告らが退職手当のすべてを自己のために費消し得べからざることは給与および退職年金の場合と同断であつて、死亡事故における逸失利益に関しいわゆる相続理論をとる場合においても、本来遺族において享受し得ない利益の賠償をこれに認めることは公平の理念上できるだけ避けるべきものと解するのが相当であるから、ここでも生活費を控除するのが相当である。

そこで、以上の事実を前提に、訴外貢が東京都交通局に従前どおり勤務し、平均的な昇給昇格ののち慣例に従つて満六〇才で退職し(ただし、退職日を便宜上昭和六六年一〇月三〇日とする)、かつ、第一二回生命表による三七才の男子の平均余命年数34.45の範囲内である昭和七七年一二月末まで生存した場合における同訴外人の得べかりし給与、退職手当および退職年金の昭和四四年一月一日現在における現価を算定すると、次のとおり一五一六万四〇九四円となる(ただし、年五分の割合による中間利息の控除は、右給与等を各年度末に受領するものとして、給与および退職手当についてはホフマン式単利現価表により、退職年金については同年別単利年金現価表によることとする)。

(1) 得べかりし給与

別表第三のとおり。

(2) 得べかりし退職手当

3万953円×80×0.45×0.4651≒149万9138円

(3) 得べかりし退職年金

63万5882円×0.45×(19,5538−15,0451)≒129万0150円

2  ところで、〈証拠〉によれば、訴外貢は、昭和四〇年五月ごろ肝臓を煩い、一時は腫脹が相当にひどく(三横指腫脹)、同月六日に行なわれた血液検査の結果も黄疽指数九(正常値四〜六)、G・O・T一〇二(正常値八〜四〇)、G・P・T九八(正常値五〜三五)と思わしくなかつたこと、治療の結果、昭和四一年一月二〇日の血液検査時には、黄疽指数九、G・O・T四二、G・O・T二四とかなり軽快したが、治ゆするには至らず、慢性化した肝炎の症状が昭和四三年一一月三〇日本件事故で死亡するまで続き、そのため引続き通院治療を受けていたこと、主治医であつた深見医師の意見によると、同訴外人の場合慢性肝炎のため寿命が短くなることはないが、仕事の上で無理がきかず、体力の消耗が比較的激しい自動車の運転業務は望ましい職種ではなく、いずれにしても治療を受けながら人並み以上の休養をとることが将来とも必要であつたこと、現に、同訴外人は、公休を含めて、昭和四二年度は九八日(うち病欠一五日)、昭和四三年度は一一月三〇日事故死するまでに一〇五日(うち病欠一八日)の休暇をとつていることが認められ、これによると、訴外貢の事故当時における健康状態ないし労働能力は一般水準より劣り、平均余命年数の範囲内である昭和七七年一二月まで生存可能である点はいいとして、事故後満六〇才に至るまでの約二三年間順調に勤務を継続し、その間平均的な昇給昇格の利益に順次与かり得る高度の蓋然性があるものと断定するについては、公務員の場合、一定の欠勤日数を超えない限り、定期昇給の面で特に不利益な扱いを受けないのが通常であるなど比較的身分保障が行届いていることを考慮に入れても、なお若干の疑問が残るものといわなければならない。

そこで、訴外貢の健康状態を逸失利益の算定にあたり斟酌する方法であるが、勤務状況が普通である限り、退職の時期およびその間の昇給昇格が約束されており、この結果がのちの収入に直接関連する本件のような場合は、右健康状態が就労可能期間および昇給等に及ぼす影響を個別的に予見し、これに基づいて逸失利益を算定する通常の方法よりも、前記のように、本人の健康状態を捨象して算出した得べかりし収入をもとに、右事情を総合的に斟酌して算定する方法の方がより合理的な損害額を算定しうるものと解する。

そこで、以上のような観点から訴外貢の逸失利益を算定すると、前記の得べかりし収入一五一六万四〇九四円のうち約九割に相当する一三六五万円をもつて相当な損害と認められる。

3  原告すゞが訴外貢の配偶者、原告宏子、同政信が同人の子であることは前記のとおりであるから、同原告らは、訴外貢の右逸失利益の賠償請求権を相続により取得したものと認められる。その額は各四五五万円であるところ、前掲の回答によれば、同原告らは、訴外貢の死亡による退職に伴い合計一〇二万九〇六〇円の退職手当を受領したことが認められるから、これを控除すると、各四二〇万六九八〇円となる。

4  なお、原告らは、訴外貢が退職する際東京都職員互助組合から受領すべかりしせん別金の喪失による損害の賠償を請求するが、右せん別金は、死亡による退職の場合は香典の一種であり、その他の退職の場合は職場を去る同僚に対し再出発を期して儀礼的に贈られるはなむけであつて、労働に対する対価たる性質を有するものではないと解するのが相当であるから、右せん別金の喪失をもつて事故と相当関係のある損害とするのは妥当でない。よつて、右請求はその余を判断するまでもなく失当といわなければならない。

(二)  葬儀費用

弁論の全趣旨によれば、原告すゞは、訴外貢のため葬儀を行ない、その費用として同原告が主張する程度の支出をなしたことが認められるが、このうち本件事故と相当因果関係のある損害額は二〇万円と認めるのが相当である。

(三)  治療関係費

〈証拠〉によれば、訴外貢は、事故当日の午前八時五五分ごろ病院で死亡したものであるが、原告すゞは、同訴外人の治療に関する費用として、治療費六一一五円、雑費一万円の支出をなし、同額の損害を受けたことが認められる。

(四)  慰藉料

訴外貢と原告すゞ、同宏子、同政信との間の身分関係は前記のとおりであり、〈証拠〉によれば、原告恒吉、同ふ志えは同訴外人の父母であることが認められるところ、同訴外人が死亡したことにより原告らの精神的苦痛を慰藉すべき額は、前記の諸事情に鑑み、原告すゞにつき一五〇万円、原告宏子、同政信につき各一〇〇万円、原告恒吉、同ふ志えにつき各二五万円と認めるのが相当である。

(五)  損害の填補

自賠責保険により、原告すゞが一〇〇万六一一五円、原告宏子、同政信が各一〇〇万円の保険給付を受けたことは当事者間に争いがない。そこで、以上の各損害合計額からこれらを控除する。

(六)  弁護士費用

原告らが弁護士たる本件原告ら訴訟代理人に本訴の提起、追行を委任したことは記録上明らかである。そこで、以上のとおり、原告らの損害賠償額が原告すゞ四九一万六九八〇円、原告宏子、同政信各四二〇万六九八〇円、原告恒吉、同ふ志え各二五万円であることおよび本件訴訟の経過等を考慮すると、被告らにおいて賠償すべき弁護士費用の額は、原告ら主張のとおり、原告すゞにつき四〇万円、原告宏子、同政信につき各二〇万円、原告恒吉、同ふ志えにつき各二万円と認めるのが相当である。

五結論

以上により、原告らの本訴請求中、被告ら各自に対し、原告すゞが五三一万六九八〇円、原告宏子、同政信が各四四〇万六九八〇円、原告恒吉、同ふ志えが各二七万円およびこれらに対する訴状送達の日の翌日である昭和四四年九月七日以降各支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める部分は理由があるが、その余の部分は失当である。

よつて、本訴請求中理由のある部分を認容し、その余の部分を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴訟八九条、九二条、九三条を適用し、仮執行の宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。(小長光馨一)

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